第29回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

  • 上武 やす子(うえたけ やすこ)
  • 74歳
  • 北海道
「アイヌ紋様刺繍の普及・振興」
アイヌ紋様は、アイヌの人々に伝統的に伝えられてきた独特の絵柄が特徴である。その紋様は魔物が身体に入るのを防ぐために施されたとも伝えられているがよくはわかっていない。現在では染織品や木製品などに幅広く用いられており、アイヌの人々の造形文化を代表するものとなっている。
平成元年頃、北海道ウタリ(同胞の意)協会(本年:北海道アイヌ協会に名称変更)の登別支部には、アイヌの衣装などの資料が何一つない状況であった。上武 やす子さんは、「このままでは、いけない。是非自分が住んでいる登別に由来する着物を作ってみたい」と思い、室蘭をはじめ、道内各地のアイヌの行事、儀式に参加、アイヌ紋様刺繍などその伝統を修得することに熱意を燃やした。
そのかたわら、平成2年から地元市民を対象とした「アイヌ刺繍教室」を開催。同5年には、アイヌ紋様刺繍を学ぶ会「ピリカノカ(美しい形)」を発足し、以後毎年作製した作品の展示会を開催している。また、昨年は、洞爺湖サミットで訪れた各国首脳らにプレゼントされたアルバムの表紙を自身のアイヌ紋様刺繍で手掛け喜ばれるなどその活動の輪を大きく広げた。
上武さんの刺繍は、紋様の伝統を踏まえながらも、現代風のオリジナルな作品を制作、また先駆者の思いを伝えるための複製にも打ち込んでいる。現在も後継者の育成のために、地元登別を中心に全道、全国に講演や指導に出向くなどその熱い想いは、今なお衰えることを知らない。
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