第29回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

  • 松田 弘(まつだ ひろし)
  • 85歳
  • 石川県
「金沢和傘の制作・普及」
松田 弘さんは、和傘職人の父の元で12才のときから修行を始めた。当時の和傘の制作工程は細かく分かれ、それぞれに高度な技術を持った職人たちによって担われていた。だが、時代だったのであろうか、職人の人たちのストライキで一時制作が出来なくなり、松田さんは全工程を学ぶことになった。結果、工程の一つでも欠けてしまえば和傘が失われてしまう中、辛うじてその技術が残った。現在、北陸地方の和傘職人は松田さん唯一人である。
北国である金沢の和傘は、雪と相まって映える優美さとともに、その風雪に耐えうる強さを兼ね備えた和傘としても独特のものである。それは、傘の中心部の和紙を四重にしたり、周辺部の糸を二重三重にしたりする点にその特徴が示されており、数多い金沢の伝統工芸の中でも特に希少性が高いものとして「希少伝統工芸品」に指定されている。
昭和62年、金沢市伝統産業貢献者として、翌年には石川県伝統産業優秀技術者として表彰され、平成8年北國新聞社より県居住者で地域に貢献している人に贈られる「風雪賞」を受賞。
「傘は人を美しく見せる道具」という松田さんの夢は、全国に金沢和傘の名を広め、後継者が一人でも多く出て来て欲しいこと。和傘職人としてその希望を語るまなざしには、北国の人の強さと優しさが秘められていた。
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