第32回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

平成23年11月東京芸術大学漆芸研究室での集中講義に於ける一場面(巻き込み作業の説明)

  • 田中 信行(たなか のぶゆき)
  • 昭和25年生まれ
  • 東京都
漆刷毛の製作・伝承
 田中信行さんは、昭和25年東京に生まれ、高等学校卒業後父正治氏のもと家職である漆刷毛製作の手伝いを始める。家職の漆刷毛製作は祖父辰五郎氏が鳥越(東京都台東区)の泉さん(分家で明治末頃絶家)で修業、それ以後漆刷毛製作を家業とし、昭和59年正治氏の引退に伴い、家職を継ぎ今日に至っている。
 日本の誇る漆工芸において、漆刷毛はなくてはならない道具であり、その果たす役割は大きいが、現在わが国において漆塗り刷毛を製作しているのは田中信行さんと文化財選定保存技術保持者の指定を受けておられる泉清吉氏の二人だけになってしまっている。
 田中さんの作る刷毛は、実に美しく、完成度は高く、使い心地も非常に良いことは言うまでもなく、その刷毛を多くの漆芸家、地場産業の漆塗り職人、指導者や漆を学ぶ学生などが使用している。また、刷毛問屋を通して他業種へも刷毛を提供している。
 田中さんは、自らもつ刷毛製作の技術を後世に残すべく多くの努力をしている。平成22年度から東京藝術大学美術学部工芸科(漆芸)の非常勤講師として、さらに平成23年度からは日本文化財漆協会の「漆刷毛製作の伝承者の養成研修」の講師として、その技術を積極的に公開している。
 漆刷毛製作の技術を次代へ引き継ぐべく、情熱を注ぐ田中さんに今後一層の活躍を期待している。
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