第34回 伝統文化ポーラ賞 優秀賞

平成24年10月撮影  自宅工房にて
型絵染制作の一工程、糊置をしている場面。長板に布をはり、型紙をのせて、へらで糊を置いていく作業です。

  • 釜我 敏子(かまが としこ)
  • 昭和13年生まれ
  • 福岡県
型絵染の伝承・創作
型絵染は、和紙を貼り合わせた渋紙に独自の世界観をあらわした模様を彫り、布地という限られた空間に防染糊を置き、染料を使って染める手法。釜我敏子さんは、そのデザインのモチーフとして、自然の中で咲くタンポポやハマエンドウなどの野の花にこだわる。切り花にはない、地面から力強く立ち上がる植物の様子や生命力に魅せられ、野外で丁寧にスケッチをしてデザイン化する。次に3種類の小刀を使い分けて型紙を作る。小刀を渋紙にあてて一気に引いて切り抜くためには、切れ味が命。その刃の音を耳で確かめながら、研ぐ頃合いをはかっていくという。また、型紙を切り抜く時には、すでに染める反物の生地が決まっているとも語る。
昭和43年、釜我さんが型染を本格的に始めたのは、この世界では遅く、30歳を過ぎてからのこと。趣味で始めたロウケツ染めにのめり込み、鍋島更紗の故・鈴田照次氏の元で学んだ卒業生に手ほどきを受けた後、翌年には佐賀大学教授で「逆蝋けつ染技法」の技術を持つ故・城秀男氏の研究会に聴講生として入り、デザインを形にすることから学び始める。その一年後の昭和45年には「第5回西部工芸展」に初出品し、奨励賞受賞という快挙。この時に美術評論家の河北倫明氏に評価されたのを励みに、それまで独学だった糊づけなどの基礎技術を学び直すことを決意する。幸運なことに、ある会合で本藍染めによる長板中形で人間国宝の、故・松原定吉氏のご子息たちに出会い、その貴重な技術習得の機会を得ることになる。
そのかいあって、昭和51年に「第23回日本伝統工芸展」に初出展して入選後は32回の入選を果たし、昭和54年には念願の日本工芸会正会員に認定された。また、平成17年には福岡市文化賞を受賞。平成19年には海を越えた大英博物館主催の「わざの美・伝統工芸の50年」に出品した。
このほか、九州産業大学芸術学部や香蘭女子短期大学などで講師、日本工芸会西部支部の常任理事などの役職を長年務めた。現在は公益法人福岡県美術協会理事。型染だけではなく地元の博多織などの研究も進め、後進の指導も積極的に行っている。
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