第34回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

平成25年 自宅にて

  • 中村 タケ(なかむら たけ)
  • 昭和7年生まれ
  • 青森県
イタコのおしら遊びの伝承
昨年11月、中村タケさんの唱え(おしら遊び、口寄せ、まじない等)が生みだす「声の力」は、DVD記録大全集「イタコ 中村タケ」(イタコ 中村タケを記録する会)として出版された。民俗資料として、音楽史の立場からも貴重な資料として、平成25年度文化庁芸術祭賞レコード部門の優秀賞を受賞している。
信仰、習俗、音楽が一体となっていると称されるイタコの中村さんは、昭和7年、青森県八戸市生まれの82歳になる現役のイタコとして、61もの唱えを記憶している数少ない一人だ。冬の厳しい天候や自然環境の中で生きる東北の人々にとって、イタコは心の拠り所としても歴史と伝統のある存在だ。先の東日本大震災の遺族たちにも、精神的な癒しや支えとなっているときく。
その存在は、人々の悩みや苦しみを和らげるだけではなく、民俗芸能や音楽史、文化史の観点からも"貴重な民俗文化財"として注目され、今回の受賞となった。
受賞の対象となった「おしら遊び」は、旧正月に行われる春迎えの儀礼である。そこで祀られる東北地方独特の神「おしら神」は、イタコが「おしら祭文」を唱えながら両手に嵌めて男女一対の人形(おしら様)に憑依し、「託宣」として、イタコの口を借りてこれから先一年の農作物の出来具合や吉兆を占う。
中村さんは、3歳の時に罹ったはしかで視力を失い、昭和19年に12歳でイタコの師匠である谷川ハル氏に入門。昭和22年に15歳で独り立ちして以来、厳しい修行を積み、65年間以上におよびイタコの業をこの地元で続け、人々の心に寄り添うイタコの伝承者として、民俗芸能の体現者としても貴重な存在になっている。そして、今日のような「おしら遊び」など、「唱え」が持つ「声の力」としても自身の技を昇華させている。
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