第35回 伝統文化ポーラ賞 奨励賞

截金ガラスの最終仕上げ
(フェルトを貼った回転盤に酸化セリウム粉をつけてガラスを磨いている)

  • 山本 茜(やまもと あかね)
  • 昭和52年生まれ
  • 京都府
截金ガラスの制作
ガラスの中に浮遊する截金(きりかね)は、光の反射を受けて見るたびに姿を変え、変幻自在な煌めきを放つ。山本茜さんは、截金をガラスに接着して、その上からさらにガラスを溶着して截金をガラスの中に閉じ込めた立体的な截金の美しい作品を作り出している。元来、截金は金箔などを切り、仏像や絵画、彫刻に貼って装飾する技法だが、それは時間とともに変色や剥落する運命にある。山本さんは截金をガラスに封じ込めることで、永遠の輝きを持つ截金美術を生み出した。
平成8年、京都市立芸術大学美術学部において日本画の模写を学び、古典絵画技法を研究する。山本さんは、平安仏画の模写を通して截金と出会い、在学中から重要無形文化財「截金」保持者の故江里佐代子氏の指導を受けてきた。平成20年には作品が第55回日本伝統工芸展に初入選し、宮内庁買い上げになるなど順調な滑り出しとなった。しかし、次第に装飾としての截金ではなく、截金主体の新たな芸術表現を模索し始め、その可能性を截金とガラスとの融合に見出し、富山ガラス造形研究所に学ぶことになる。
平成23年に同研究所を卒業すると、京都市内に個人工房を設立し、新しい「截金ガラス」の制作活動が始まった。ガラスの上には、下書きを描いて作業をすることは許されない。それは、ガラスを電気炉で溶着するとき、熱で下書きの線が発泡して気泡が生じてしまうからだ。そのため、フリーハンドで直線などを描くのは、神経を使う作業だという。こうして封入した截金は、ガラスの中に三次元に浮遊させることが可能になり、カットした面の角度からの映り込みなど、さまざまな表情を見せ、截金は装飾技法の枠を越えた。
平成23年には第40回日本伝統工芸近畿展 日本工芸会近畿支部長賞をはじめ、第23回伝統工芸諸工芸部会展 朝日新聞社賞、翌年には平成24年度京都市芸術新人賞、昨年は第61回日本伝統工芸展 NHK会長賞を受賞するなど評価を得ている。
今回の受賞は、截金の伝統的な技法を応用しながら、ガラス工芸の分野を取り入れて截金美術の新しい可能性を拓き、これまでにない新しい美の世界を創り出していることが評価された。
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