第36回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

原石を硯の型にし、石に描いた図案に添って彫刻を浮き立たせるように金槌とタガネで落とす様子

  • 堀尾 信夫(ほりお のぶお)
  • 昭和18年生まれ
  • 山口県
赤間硯の制作・伝承
古典的な硯が持つ制約を取り払い、墨をする陸(墨堂)と墨汁をためる海(墨池)があれば硯として成立するという柔軟な発想で、あかすずりによる新しい硯の造形世界を切り拓いてきた堀尾信夫さん。
赤間硯は、15世紀末頃から下関市の関門海峡沿いに硯師たちが定住して始まったとされ、600年以上の歴史を持つ。堀尾さんは、昭和42年に23歳で父の堀尾卓司さんに師事し、地元特産の赤間石を使った伝統的な赤間硯の継承者として半世紀にわたり歩んできた。父もまたこの歴史ある赤間硯を近代美術工芸として蘇らそうとした硯作家だった。
赤間石は赤褐色で緻密さに粘りもあり、墨をするためのざらついたほうぼうの大きさが一定で、墨色の良い墨をすることができる硯に適した石といわれている。地元の赤間石を使い続けることにこだわる堀尾さんが、その作品《「ふね」硯》で初入選を果たしたのは、昭和46年の第18回日本伝統工芸展。そして、平成10年第14回伝統工芸第七部会展の「長方研」で日本工芸会賞、平成11年第46回日本伝統工芸展の「無地研」で日本工芸会奨励賞、平成21年第56回日本伝統工芸展の「横置楕円研」で日本工芸会会長賞を受賞。その作風は、古硯に原点を置きながらも、面と線を活かし、現代的な感覚を投影させた独自の造形美を追求し、赤間硯を人々に親しみやすいものとしている。
こうした活動により、平成11年に山口県選奨、平成14年山口県指定無形文化財赤間硯保持者認定、平成26年には旭日双光章の栄誉を受けている。このほか日本工芸会山口支部の副幹事長、参与として伝統工芸の普及、振興に務め、日本伝統工芸展や伝統工芸諸工芸部会展の鑑査・審査委員も務めている。また、講演や実演で赤間硯の歴史、技法や鑑賞法を紹介するとともに、平成元年と、平成22年に入門した後継者の育成にも力を入れており、今後のさらなる発展を期待して地域賞に選定された。
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