第36回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

第十六座 八雲払(やぐもばらい)の一場面
平成27年10月3日 阿蘇市神楽フェスティバルにて

  • 中江岩戸神楽保存会(なかえいわとかぐらほぞんかい)
  • 昭和35年設立
  • 熊本県
岩戸神楽の保存・伝承
中江岩戸神楽は、約240年前から熊本県阿蘇市波野の中江地区で続く国選択無形民俗文化財指定の民俗芸能。約1400年前に創建された地元の荻神社で、4月と9月に開かれる春秋の祭りや7月の阿蘇神社の祭りに奉納される神楽だ。2つの神社には、阿蘇ゆかりの神々が祀られており、神楽も「天の岩戸」など『古事記』や『日本書紀』に出てくる神話を題材にした内容になっている。宮神楽、里神楽、宮雅楽と まいなどの鮮やかな色彩の衣装をつけた舞楽を取り入れ、バラエティー豊かな構成になっている。
この神楽を舞うのは、中江地区の22世帯の小さな集落に暮らす男性たち精鋭15名。準備を手伝う女性たちも加えて集落が一丸となって神楽に取り組み、県内外や海外に伝統を伝えてきた。
演目は全部で三十三座。第一座の「ほうれい」で神々に祈る儀式から33番まで連続した神話劇が続く。素面で舞う神楽や、仮面をつけて神話を演劇風に踊るもの、第二十座「しばひき」は神と観衆が榊を引っ張り合うコミカルなもの、第二十三座「綱の竹(てんしめ)」のように高い竹竿に登って舞う曲芸風の神楽など様々な内容だ。
しかし、近年は他の娯楽施設や過疎化の影響で、全三十三座の伝承が難しくなっていた。
そんな折、平成2年1月に熊本県立劇場で24時間通しの三十三座完全復元公演をする企画が持ち上がり、監修者立ち合いのもと復元に成功。それを機に保存会の活動に弾みがつき、平成4年からは毎月定期公演を実施。神楽を中心とした村おこしが進んだ。荻神社の隣には専用の稽古所の神楽殿を建設、道の駅・波野には神楽フェスティバルが行われる神楽苑、神楽が学べる神楽館などがつくられている。
こうした活動により、平成元年熊本県文化財功労者賞、平成9年くまもと県民文化賞、平成17年伝統文化活性化国民協会賞、平成18年文化庁地域伝統文化功労者表彰を受けた。また、後継者の育成にも力を入れており、地元の小学校や中学校での定期的な神楽指導を行っている。中江地区は先の熊本地震による被災は軽微であったが、阿蘇神社は大きな被害を受けた。阿蘇神社や熊本の力になれるようにと保存会は定期公演をいち早く再開するなど復興への動きを加速している。これまでの岩戸神楽を継承するための一連の活動に加え、今回の地震によって保存会の結束力も一段と充実し、地元を復興へと元気づける期待も高まり、今回の地域賞の受賞となった。
close