第37回 伝統文化ポーラ賞 優秀賞

「仮名手本忠臣蔵 一力茶屋」を語る
竹本葵太夫さん。
(平成28年11月国立劇場にて)
(撮影:小川知子)

  • 竹本 葵太夫(たけもと あおいだゆう)
  • 昭和35年生まれ
  • 東京都
歌舞伎竹本の伝承
「従」にこだわった、歌舞伎の義太夫を語る竹本葵太夫さん(本名:
柳瀬信吾)。「でしゃばってはいけない。頼りなくてもいけない」と、あくまで主役の歌舞伎役者の演技を立てながら、「語り」で劇の進行を助ける。
現在、一番旬な太夫といわれる葵太夫さんは、中村吉右衛門、中村梅玉らから指名を受ける多忙な日々を送っている。文楽の太夫は登場人物の全役を一人で語り分けて進行するが、歌舞伎では物語の状況説明や、役の心の機微を描写するのが中心となる脇役的な役割になる。それが、葵太夫さんが"語りで役者を支える"、太夫としての魅力を感じるところだという。
昭和35年東京都大島町生まれ。中学時代に義太夫に魅せられ、昭和51年に女流義太夫の太夫竹本越道に手ほどきを受ける。同54年4月に国立劇場歌舞伎音楽(竹本)の研修生となり、5月には竹本扇太夫から二代目竹本葵太夫の芸名を許されるという順調なスタートを切っている。その義太夫の道に進んだ原点としてあげるのが、故郷の大島の無形文化財指定の「神子舞」。地元の吉谷神社の正月祭に、10歳くらいの男児が女装して奉納する神事だ。その体験が、今日の葵太夫さんの遠因になったともいう。
文楽とは違う、歌舞伎義太夫の修業の大変さが垣間見えるのが床本。歌舞伎の場合は同じ外題でも播磨屋型、橘屋型、成駒屋型など、役者の芸系による型の違いや演出があり、その型ごとに太夫が語る詞章や表現の注意などを書いて床本を作り直す。それでも日々の舞台では何が起こるかわからない。その時には太夫が三味線と連係し、間合いをつなぐなどの"見計らい"で、舞台に支障のないように務めるという。
『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』などの時代物の重厚な語り口にも定評があり、昭和62年、27歳で第37回芸術選奨文部大臣新人賞を受賞するなど数々の賞を獲得し、平成8年には重要無形文化財(総合認定)となった。その人気と磨かれた芸の実力と、斯界での人望の厚さも含めて、今回の受賞となった。
close