第37回 伝統文化ポーラ賞 奨励賞

素地に彫刻刀で彫りを施す和田さん。
(平成28年工房にて)

  • 和田 的(わだ あきら)
  • 昭和53年生まれ
  • 千葉県
白磁の制作
白一面の画面の中から、陰影のある立体が立ち上がってくるような錯覚を覚えるのが和田的さんの白磁の作品。天草陶石の磁土をろくでぎりぎりまでひいた塑型を、特注のかんなで削り出す彫刻のような技法が、和田さんの作品の代名詞になっている。その削りによってできた面と面が交差したところに光がまわると、繊細な陰影が静謐な佇まいを見せる。
昭和53年に千葉県で生まれた彼は、22歳で文化学院芸術専門学校陶磁科を卒業すると、陶芸家の上瀧勝治氏に師事。有田焼の名工ともいわれる上瀧氏の白い壺を見て、磁器の世界へ進むことを決心したという。平成17年に27歳で日本工芸会正会員になったが、その5ヶ月前に自分の窯を千葉に構えて独立。その背景には、日本伝統工芸展に4回入選すると正会員になれるので、4回目は自分の窯で焼いたものを出品したいというこだわりがあった。
それが現実になり、平成19年20代最後の年に第35回新作陶芸展で日本工芸会賞を受賞。そのときの作品が白器「表裏」で、歪みやねじれなどがないエッジが効いた直線と曲線が交錯する様相に、新しい陶磁器の表現者としての登場となった。彼によって磁土には陶土にはできない表現があることがクローズアップされることになった。
そして、平成21年には第3回菊池ビエンナーレに白器「ダイ/台」で奨励賞、同年第20 回日本陶芸展「ザ!オブジェ」で池田満寿夫特別賞、平成22年第50回東日本伝統工芸展で白磁「はこ」で第50回展記念賞と、立て続けに磁器の新しい可能性を表現してみせた。
作品の根底に流れているのは「静けさ」だという。自然の中に身を置いたときに感じる癒しの静けさ、自然が発する静かなエネルギーを感じる作品を生み出すために、彫刻のような手から直接に伝わる手法にこだわるのだと語る。
平成24年には多治見市陶磁器意匠研究所で、平成25年と26年には茨城県立笠間陶芸大学校でワークショップとスライドレクチャーなどを行うなど、後進の指導にも力を入れ始めている。こうした一連の「磁器の表現」の面目を一新した功績が、奨励賞の受賞となった。
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