第37回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

「再興30周年 鶴見の田祭り」で《神寿歌》を演じ終えた演者が、古式の則り直会を行った。(平成29年4月29日)

  • 鶴見田祭り保存会(つるみたまつりほぞんかい)
  • 昭和61年設立
  • 神奈川県
鶴見の田祭りの保存・伝承
「〽練れ 練れ 練れや 我前を練れよ〜」と、豊作祈願をするかむほぎうたとともに始まる神奈川県横浜市鶴見区の「鶴見の田祭り」の神事が、昭和62年の復興から今年で30周年を迎えた。鶴見神社の境内で、田んぼに見立てた"ヤッサイ"という藁包を囲み、歌にあるように田の土を練り上げる春の田起こしから、なわしろき、種まき、田植えなど、秋の収穫までの一連の農作業を、個性豊かな12人の稲作人たちが模造の鍬や鋤を使って歌い踊る。
この「鶴見の田祭り」は、今から700年前の鎌倉時代から鶴見の地に受け継がれてきた伝統的な神事。江戸時代の文化・文政期(1804-1830)に編纂された『新編武蔵風土記稿』に、鶴見神社(当時は杉山大明神)境内で、年の初めの正月16日の夕方に行われていたことが記されている(現在は4月29日に行われている)。五穀豊穣を願う予祝行事として、田の神に祈る儀礼が神楽となり、庶民の間で芸能色豊かな「田祭り」となったとされ、同様の祭りが全国に300近く存在するという。
その中で、「鶴見の田祭り」が稀有なのは、明治4年を最後に、文明開化の波にもまれて途絶えてしまい、1世紀以上も見たことも演じたこともない状況から復興させた祭りであること。
これは、鶴見神社の現在の金子元重宮司が学生時代に町内の古老から聞き取りしたことがきっかけとなり、昭和50年頃から本格的な文献や資料探しに着手。発掘した文献をもとに鶴見歴史の会や地元の有志の協力を得て、同様の神事が行われている静岡県三嶋大社や東京都板橋区の徳丸北野神社などを訪ねて調査研究や神壽歌の解読作業を重ねた。その結果、昭和61年に「鶴見田祭り保存会」を設立し、昭和62年に115年ぶりに第一回復活「鶴見の田祭り」を斎行することができた。
以来毎年4月29日に鶴見神社境内で斎行し続け、平成6年の鶴見区民文化祭で鶴見公会堂で公演したのを始め、県内外の諸施設で「田祭り」を公演し、平成21年には静岡県で開催された「第24回国民文化祭」にも出演。平成25年に横浜市無形民俗文化財保護奨励団体に認定されている。
こうした一連の「鶴見田祭り保存会」の設立までの経緯と、地域を挙げての調査研究で、貴重な神事の往年の姿を復興させた努力を顕彰して、今回の受賞となった。
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