第38回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

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木工轆轤による仕上挽き(平成30年)

  • 煬氏@國光(たかつき くにみつ)
  • 昭和51年生まれ
  • 岡山県
木工芸の制作

木の生命力を感じる、ひとつひとつ違う年輪の美しい表情が引き出されているのが郷原漆器の特長。岡山県真庭市の郷原地区で約600年の伝統を持つ、素朴でぬくもりのある漆器だ。昭和20年の終戦の混乱の時期に、生産が衰退して伝統の技術が途絶えてしまった。そんな中、平成時代に入ってから、その復興への取り組みに木地師として加わったのが
煬字光さんである。

煬獅ウんがこの道に入ったのは23歳の時。それまでは高校、大学と空手の選手として海外遠征をするなどして活躍してきたが、海外で異文化に触れるうちに日本の伝統文化の大切さに気づき、石川県挽物轆轤技術研修所に入ったという異色の存在だ。

郷原漆器の具体的な復興は、平成元年から岡山県郷土文化財団が中心になって始まった。平成15年に研修所を卒業した煬獅ウんは、平成18年に郷原漆器が「岡山県指定重要無形民俗文化財」となり「郷原漆器生産振興会」が開設されると、木地師として迎えられる。同時に「郷原漆器の館」の館長として就任。その間に塗りの研鑽も重ね、平成13年には兼六園で開催された第7回工芸作品公募展で石川県知事賞、同17年には第48回日本伝統工芸中国支部展で岡山県知事賞を受賞するなど、作品づくりの腕を上げていった。

「郷原の豊かな自然を活かした漆器」の良さを語る煬獅ウん。乾燥させずに輪切りにした山栗などの生木を、旋盤で一気に削り上げる時に浮かび上がる、山水画のような木目模様が面白いと説明する。

平成29年、鉄鉢型の伝統的な力強いフォルムと美しい黒漆の「欅造鉢」で、日本伝統工芸展でNHK会長賞に輝いた。ブラックカーボンを溶かした漆を木地に何度も塗っては拭く「拭き漆」という手法で、「木が持つ優しさに加えて、背後にある自然界の厳しさも表現できる色」として、まさに漆黒の美しい鉢が完成した。

煬獅ウんの作り出す、こうした伝統的な形をベースに、木工の新しい在り方を示している作風に技術の優れた裏付けの確かさを評価して、今回の受賞となった。

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