第38回 伝統文化ポーラ賞 地域賞

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工房でのアットゥシ織の様子(平成29年)

  • 貝澤 雪子(かいざわ ゆきこ)
  • 昭和16年生まれ
  • 北海道
アットゥシ織の制作・伝承

「アットゥシ」とは、アイヌ語で樹皮衣のこと。貝澤雪子さんは、北海道に自生するオヒョウ(ニレ科)などの樹木の皮を素材にしてつくる織物「アットゥシ織」の伝承者。昭和16年に北海道日高村に生まれた雪子さんは、昭和35年に19歳で貝澤守幸さんと結婚し、北海道沙流郡平取町二風谷地区で、守幸さんの母ハギさんからアットゥシ織を伝承してきた。

姑のハギさんは「二風谷アットゥシ織生産組合」の副組合長であり、「手も器用で、商売も達者」だったそうで、雪子さんはその技を目で習得してきたと語る。そして雪子さんの代になり、以来50年以上にわたり「アットゥシ織」の第一人者として、アイヌの伝統を守りつつも、今までのアイヌ工芸品とは違う個性豊かな作品を生み出している。

アットゥシ織は、仕事の8割がオヒョウからつくる糸作りに費やされる。荒皮を剥ぎ、中の内皮を取り出して釜で煮て軟らかくし、洗ってぬめりを落とす。その後、乾燥させて細く裂き、捻じりを加えて結んで繋ぎ合わせて糸ができあがる。それを腰機と呼ばれる機織りにかけて、根気よく織り上げていくのだが、最近は帯地などデザイン性が問われる注文も増えて、草木染による染色にも工夫をしている。クルミやヨモギにハマナスなど、北の大地から取り出したような、やさしい風合いの色が美しく染め上げられており、最近はマリーゴールドの花のオレンジ色など、実験的な染糸などにもチャレンジしている。

こうした作品づくりで、平成17年アイヌ工芸作品コンテスト「伝統工芸部門優秀賞」、平成19年には第8回日本紬織物サミットでグランプリを受賞。また、平成23年には北海道アイヌ協会から優秀工芸師に認定され、同年「アイヌ文化奨励賞」を受賞。日本工芸会による「日本伝統工芸染織展」でも平成20年から毎年のように入選を果たしてきた。

これらの素材採取から機織りまでの一貫した工程を行う制作工程で、アットゥシ織の工芸的価値を一層高め、広めるものとして高く評価し、今回の受賞となった。

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