第39回 伝統文化ポーラ賞 優秀賞

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第16回竹本越孝の会
(平成24年11月 内幸町ホール)
(撮影:福田知弘)

  • 竹本 越孝(たけもと こしこう)
  • 昭和28年生まれ
  • 東京都
女流義太夫節の伝承・振興

「義太夫は、和製オペラ」と語る竹本越孝さん。その例えには、義太夫が単なる語り芸ではなく、情景描写やセリフ回しまでも音楽と考えて演じている自負が込められる。それは素浄瑠璃(すじょうるり)とも呼ばれ、太夫と三味線の二人だけで、人形や舞台美術などなしに物語を立体化する。なかでもヒロインが切々と述懐する義太夫のクドキやサワリが「オペラのアリアに似ている」という。その語りは登場人物を声色ではなく“息に声を乗せる技”で瞬時に変化させ、豊かな表現力で観客を魅了する。

昭和47年、女流義太夫の世界に飛び込んだのは18歳の時。大学の浄瑠璃のゼミに所属する先輩から義太夫節の調査を頼まれ、電話帳を頼りにたどり着いたのが師匠であり後に義母となる故・竹本越道(第16回 伝統文化ポーラ賞 特別賞受賞)だった。初めての彼女に義太夫節を語り演じてみせるなど、気さくな師匠に稽古を勧められ通ううちに入門することに。
かつて師匠は娘義太夫の最後の一人、東都随一の美人太夫と評判された逸材。当時の上野・本牧亭でトリをとる師匠が、修業中の弟子の傍らで10年間も三味線を弾いてくれたという。

越孝さんは、昭和49年に初舞台を踏み、精進を重ねて平成12年に重要無形文化財「義太夫節」(総合認定)の保持者に。同19年と23年には女流義太夫で初となる素浄瑠璃でのフランス公演を成功させるまでになった。

近年は師越道ゆずりの『艶姿女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)』「酒屋の段」などで人物像の的確な語り分けが注目され、平成30年に演じた『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』「祇園一力茶屋(ぎおんいちりきぢゃや)の段」の掛合いでは、寺岡平右衛門(てらおかへいえもん)の語りが出色の出来と称賛された。また本年5月の『義経千本桜』「すしやの段」では90分余を語り通し、無頼漢いがみの権太の隠された悲劇を浮き彫りにした名演で、独自の芸境を切り拓き、その熟成が評価されて今回の受賞となった。

越孝さんは「先達の芸を守りながらも伝統芸能は動かすことが大事」と、古典から創作もの、他の音楽芸能とのコラボレーションを企画するなど精力的な活動を続けている。

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