第39回 伝統文化ポーラ賞 奨励賞

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『阿古屋』箏・三弦・胡弓演奏(平成27年10月 紀尾井ホール 第1回川瀬露秋の会)
(撮影:福田知弘)

  • 川瀬 露秋(かわせ ろしゅう)
  • 昭和42年生まれ
  • 東京都
地歌箏曲・胡弓の伝承・振興

川瀬露秋さんは、箏曲発祥の地といわれる福岡県久留米市出身。日本の伝統文化を好む母親の影響で、7歳から箏や三弦を学び始める。中学校2年生のときに、川瀬さんの地歌三弦と尺八を習っていた弟2人で合奏した「長等(ながら)の春」で、三世川瀬順輔(第29回 伝統文化ポーラ賞 優秀賞受賞)に見い出され、斯界に入った優れた素質の持ち主である。

15歳で上京し、順輔の義姉である川瀬白秋(第11回 伝統文化ポーラ賞 特賞受賞)の内弟子となり、のちに養女に迎えられ家の芸の後継を託された。

川瀬一門の九州系地歌箏曲と師の胡弓にひたすら精進を重ねて、昭和62年、「白秋会25周年記念演奏会」にて「三曲糸の調」を演奏し、小林露秋の名を許された。さらに、平成21年、川瀬白秋の養女となり、平成23年「白秋会50周年記念演奏会」にて『阿古屋(あこや)』を演奏し、川瀬露秋を改名披露した。

その後も、芸に磨きをかけ、平成27年と本年春の独奏会で、その成果を遺憾なく表し、その存在感の大きさを示すに至っている。とりわけ師承の芸・胡弓の演奏に出色の味わいをみせ、評価を一段と高くしたことが注目される。

一方、師匠開拓の歌舞伎三曲にも精力的に取り組み、多彩な歌舞伎音楽の箏・三弦・胡弓の領域で、舞台出演から黒御簾まで演奏・作曲編曲に活躍し、さらに若手俳優指導等に尽力、歌舞伎界への寄与も高く評価されている。坂東玉三郎の『阿古屋』では後見、また『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』「縁切り」の胡弓演奏を長年勤めてくれた白秋の後継者だからと声がかかる。舞台の演奏や後見を通して多くのことを学ぶという。歌舞伎『阿古屋』上演には三曲指導・後見として、いまや不可欠の存在ともなっている。

令和元年は川瀬さんが養女となって、10年の節目となる。養母の川瀬白秋は、平成25年に亡くなったが、さまざまな芸の力や人脈を残してくれた。師なきあと、九州系地歌箏曲を藤井泰和に師事。その芸脈の次世代継承者として、また、国内外での演奏活動や後進への指導など、多彩な活動を通して、一層の活躍が期待できるとして受賞の運びとなった。

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