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顕彰と助成

本年度の受賞者

令和4年度 第42回 伝統文化ポーラ賞 受賞者(敬称略)

優秀賞

制作風景

  • 川口 清三(かわぐち せいぞう)
  • 昭和37年生まれ 愛知県
木工芸の制作・伝承

森林を豊富に有する日本では、建築や家具、生活用具、工芸品などをつくるための素材として古くから木材が用いられてきました。木工芸の伝統技法には、刳物(くりもの)、挽物(ひきもの)、曲物(まげもの)、指物(さしもの)、結物(ゆいもの)などがあります。なかでも歴史的にもっとも古い「刳物」は、鑿(のみ)や鉋(かんな)を用いて木の塊を刳り出す手法で、複雑な曲線や丸みのある形を自在に削り出すことで、盆、皿、鉢、箱などがつくられます。木工芸は技術的・芸術的にも優れた日本独自の工芸として発展しており、木工作家たちによる多彩な作品が生み出されてきました。

実用的な工芸品でありながら彫刻作品ともいえる斬新な造形力が高い評価を受けています。木地の木目の美しさを引き立たせる精確な技をもち、独自の木工芸の世界を追求していることなどが評価され、今回の受賞となりました。


製作風景

  • 川口 清次(かわぐち せいじ)
  • 昭和34年生まれ 千葉県
歌舞伎鬘の製作

川口清次氏は、鬘師としての高度な技術を保持し、かつ豊富な経験を有することから、著名な歌舞伎俳優や歌舞伎床山など、関係者から厚い信頼が寄せられます。その都度役者に合わせて調整するきめ細やかな仕事で、月に約30〜40人もの役者の鬘合わせを手掛けます。令和2年10月には、重要無形文化財「歌舞伎」の伝承を支えるうえで、保存の措置を講ずる必要があるものとして、文化庁によって「選定保存技術」の保持者に認定されました。

役者を支える鬘製作。表舞台で活躍する方だけではなく、「舞台を支える方々を応援する」、というのが弊財団の設立趣意であり、今回初心に立ち返った形になります。後進の指導・育成にも精力的に取り組む川口氏は、令和2年10月に選定保存技術保持者に認定されたことを受け、令和3年度より、国庫補助事業として、後進の指導・育成を実施。同年5月から3月にかけて、毎月2〜3回、製作の全工程の研修を実施し、技術の継承に尽力します。現状では鬘製作を行える人が少なく、継承が急務となっているため、全工程を担える伝承者の指導・育成に取り組んでいる点等も評価されました。


奨励賞

制作風景

  • 佐藤 典克(さとう のりかつ)
  • 昭和49年生まれ 神奈川県
白磁の制作・伝承

白い素地に透明の釉薬をかけて高温で焼き上げたものを「白磁」と呼びます。白磁の起源は6世紀、南北朝時代の中国に遡るとされ、日本には朝鮮半島から渡来した陶工によって17世紀初頭にその製法が伝えられたとされます。後に有田の泉山(佐賀県)で良質な白磁石が発見されたことから磁器の量産が始まり、絵付けを施した色絵磁器もつくられるようになりました。明治以降には白磁の美を追求する陶芸家たちが現れます。清時代の磁器から影響を受けつつも浮き彫りによって文様を施すなど、白磁特有の優れた作品がつくられました。

伝統的な陶芸技法を受け継ぎながら、新たな表現を追求し続けることで独自の作風を生み出しています。白磁に留まらず、色絵や漆、金箔などを用いた表現に取り組むなど、変化と深化を繰り返す佐藤氏の更なる活躍が期待され、今回の受賞となりました。


地域賞


平成23年2月2月 番楽閉講式の記念撮影
山谷小学校(平成24年閉校)にて

北海道・東北
  • 秋田市太平山谷番楽保存会(あきたしたいへいやまやばんがくほぞんかい)
  • 秋田県
太平山谷番楽の保存・伝承

日本海に面した秋田県・山形県に伝承されている神楽を番楽と呼びます。太平山谷番楽は、太平山の山岳信仰に密接に関係する芸能で、中世末期から近世初頭にかけて、修験者(修験道の修行者、山伏)が伝えたといわれています。生面神社(せいめんじんじゃ)の御神体である「お面」を用いて演じられ、所作にも古い時代の要素が多く残るとされています。かつては表裏24番の演目があったといいますが、現在は「露払い」「三番叟」「神舞」「五条橋」の四演目が継承されています。

この芸能は、特に子どもたちが精力的に継承活動を行っている点が特徴です。さらに、「親の会」が基盤となって芸能を支えるほか、移り住んできた人たちも芸能の伝承に協力します。地域、世代を超えた「絆」が、この芸能の魅力といえるでしょう。また、文化財にも指定されている貴重な「お面」を使用し、その技を後世に受け継いでいる点等が評価され、今回の受賞となりました。


大子那須楮保存会会長
齋藤 邦彦

関東
  • 大子那須楮保存会(だいごなすこうぞほぞんかい)
  • 茨城県
大子那須楮の生産・加工

茨城県大子町では、水はけの良い斜面地と一年を通じて昼夜の寒暖差が大きい気候などを生かして古くから楮が栽培されてきました。江戸時代には水戸藩二代目藩主・徳川光圀によって楮の植栽が奨励され、地域の特産品へと発展。栃木県那須地域の問屋を通じて全国に流通していたことなどから「那須楮」と呼ばれ取引されるようになりました。
大子産の楮は繊維が細く緻密であるため、絹のような光沢のある上質な和紙に仕上がります。こうした品質の良さからも、岐阜県美濃市の「本美濃紙」や福井県越前市の「越前和紙」の原料としても使われており、伝統的な「手漉き和紙」の生産になくてはならない素材となっています。楮の育成と加工は手作業で行われます。加工工程のなかでも、楮を蒸した後、一本一本を専用の小刀を使い表皮(黒皮と甘皮)を取り除く作業には、熟練した技術を要します。

大子那須楮は、国指定重要無形文化財である本美濃紙をはじめとする伝統的な和紙づくりにとって必要不可欠な素材です。また、和紙は様々な文化財修復にも使用されることから、伝統産業と文化財保存を支える重要な役割を担っています。
令和2年には生産技術が大子町無形文化財に指定。伝統を受け継ぎながら、地場産業としての更なる発展と地域活性化にも繋がる活動などが評価され、今回の受賞となりました。


神社奉納舞

関東
  • 下間久里獅子舞連中(しもまくりししまいれんちゅう)
  • 埼玉県
下間久里獅子舞の保存・継承

下間久里獅子舞は、越谷市下間久里の香取神社において、毎年7月第3日曜日に行われる獅子舞です。太夫獅子・中獅子・女獅子が登場する、いわゆる三匹獅子舞の典型的な形式であり、演者は揃いの衣装で袴をはき、腹部に太鼓をつけ、3頭一組になって舞います。また、獅子に太夫や花笠、笛吹きなど、総勢30人程が付き添い、地区内の各家々をまわり、悪疫退散・家内安全・無病息災・五穀豊穣などを祈念して芸を披露する点も特徴的です。

元禄年間(1688〜1704)に伝来したとされるこの芸能は、埼玉県東部に伝わる三匹獅子舞の典型例であり、春日部市や千葉県野田市に伝わる獅子舞は下間久里から伝授されたといいます。このような歴史的価値に加え、小学校での積極的な伝承活動等も高く評価されました。


日本油桐伐採

北陸・甲信越・東海
  • 木戸口 武夫(きどぐち たけお)
  • 昭和34年生まれ 福井県
研炭の製造・伝承

木炭は、古くから燃料として使われるだけでなく漆芸品や金工品の制作に欠かせない研磨道具として用いられてきました。こうした木炭を「研炭(とぎすみ)」といい、現在は、駿河炭(するがずみ)、朴炭(ほおずみ)、呂色炭(ろいろずみ)、椿炭(つばきずみ)の四種類が研炭として使われています。駿河炭の原料であるアブラギリは、トクダイグサ科の落葉高木で、種子から油が取れることからも、日本では戦前から戦後にかけて盛んに植林されました。明治10年頃、駿河漆器の生産業者によってアブラギリからの研炭製造がはじまった後に広く使用されるようになったことから「駿河炭」と呼ばれるようになりました。大正時代以降は静岡県での製造は衰退しましたが、原木が豊富にあった福井県や石川県で製造されるようになりました。
四種類の研炭は、原木・製炭方法・研磨用途が異なります。この四種すべての製造技術を継承しているのが木戸口武夫氏です。

現在、研炭製造の伝統技術を受け継ぐ唯一の技術者。漆芸品の制作では、漆を重ね塗りしていく工程において塗りムラをなくすために研炭を用いて表面を磨きます。研炭は漆芸や金工などの伝統工芸を支える必要不可欠なものであり、木戸口氏の製造する研炭は非常に良質であることからも職人たちから高い評価を得ています。日々の研究と技術練磨にも励みながら、研炭とその製造技術を後世に伝えるべく、炭焼き体験の実施や研修生の受け入れを行うなど、後進の育成なども高く評価されて、今回の受賞となりました。


平成29年 笹の舞部分

九州・沖縄
  • 御松囃子御能保存会(おんまつばやしおのうほぞんかい)
  • 熊本県
御松囃子御能の保存・伝承

「御松囃子御能」は、毎年10月13日、菊池神社の秋季大祭で奉納される、囃子にのせた厳かで優雅な舞です。当日は御松囃子御能の他、能の仕舞や狂言、子どもを演者とした狂言小舞も奉納されます。松囃子とは、もともとは神の依代(よりしろ)としての松を家に迎えることで、祝儀の芸能となっていきましたが、この芸能は、地域に根づいた松囃子として貴重な芸能です。平成10年には、「菊池の松囃子」として国指定重要無形民俗文化財に指定されました。

猿楽や能の謡初(うたいぞ)めに演じられる「松囃子」の系統であると考えられることから、能の古い形を民俗芸能として伝えている点が魅力の一つです。保存会は、地域で広く会員を募集しているほか、狂言方は小学校の総合学習やクラブ活動にも積極的に取り組んでいます。この活動により、子どもも大人も芸能に参加しており、地域一帯で守り、伝えてきた点が評価され、今回の受賞となりました。

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